コミュニケーションのこつ

自閉症スペクトラムASDの人とコミュニケーションをうまくとるには…

自閉症スペクトラムの人はみんなそれぞれに違うので関わり方がとても難しいのですが、大人でも子供でも本当の気持ちの通うコミュニケーションをしたい、と思ってこれまで色々な方と試してきました。RDIではコミュニケーションに関して以下のような考え方に基づいています。

 

  1. 人と人がコミュニケーションをとるとき何より最初にお互いに情報をやりとりしよう、と気持ちが合わなければ始まりません。話しかける方に本当に言いたいことがあるだけでなく聞きたいと思っている相手がいなければ成立しません。


  2. コミュニケーションのちからはことばが出るようになる前に非言語的な部分で飛躍的に発達します。ことば以前に身につける大切なちからとして、人とやりとりをするちから(competence in interaction)なにかひとつ人と共通のものに意識をむけること(joint attention)他の人と関わりたいと自分から感じる気持ち(internal motivation to interact with others)自分から関わりを始めるちから(initiation)どんなことが起こるか予測するちから(anticipation)困ったとき誰のどんなところをみれば自分に必要なことがわかるか参照するちから(social referencing)やりとりを続けていくちから(co-regulation)自分と他の人が別々の意思を持つ存在だとわかること(sense of self vs. others)などがあります。


  3. ことばは本来何か考えた結果、あるいは考えなくても無意識に行動した結果生まれます。こどもたちがことばを使って話し応えられるということは飛行機(つまり言葉という形に現れる乗り物)の自動操縦ができるようになっているのと似ています。


  4. ことば/言語は人とやりとりをしようという意思と無関係におこることがあります。自閉症の人は自分自身にも聞いている相手に対しても中身のないことを言うことがあります。


  5. 本来の典型的な発達が進み2歳を過ぎると、第二のコミュニケーション革命「自分の中の会話」(communication with self)が始まります。これはよく考えたり(=内的思考のための言語)自分自身をコントロールできる(自分の感情や行動を意識しコントロールする)ようになるために不可欠なものです。


  6. 言語と思考は互いに影響しながら発達します(認知が感情と一緒に発達するのも同じです)。よく考えるようになったわけでもないのに発語が増えたとしたら、ことばに本来の意味がついていない可能性があります。


  7. わたしたちの日常の中で会話の80%は特に相手の反応を得ることを目的とせず、経験や考えを共有しようとするものです。このタイプのコミュニケーションをdeclarative communicationといいます。


  8. 自閉症の人に話しかけるとどうしても質問、命令、促しになってしまうことが多くなり、決まった反応を求めるコミュニケーションになりがちです。このタイプのコミュニケーションをimperative communicationといいます。

 

自閉症の子とやりとりをするときこちら側が働きかける方法を変えると直接子から返ってくる応答ややりとりを変えていくことができます。以下のような例があります。

 

ーかける言葉の数を減らし、ことば以外の方法のやりとりを増やす(non-verbal communication)オーバーな程に顔の表情やしぐさ、身振り手振り、言い方や早さ、声の大きさを変えるなどことば自体を使わないで大切な情報に気づきやすいようにする


ー話す早さをゆっくりにして、こちらの言おうとしていることがよくわかり頭の中で考える時間をとってよく考えた後反応できるようにする。答えが返ってくるまで45秒は待ちましょう。


ー言葉数をその子と同じくらいに合わせる。たとえば2、3語でその子が応えるならこちらも同じくらいの言葉数で返す。もしまだことばが出ていない場合かけることばをできるだけ短くする。


ー会話をつなぐとき、ちゃんと話の流れにあったことばを返すまで待つ。


ーことばが出る前に考えが先に来ているか、確認する


ーコミュニケーションの量ではなく質•内容を大切にする


ー本来の会話の構成であるdeclarative 80% imperative20%にする