FAQ: よくある質問

(a)早期治療でないとダメ?

自閉症の治療に早期治療が大切とよく言われますが、こどもの年齢との関係は?

 

…お子さんの年齢が進むと確かに経験が積み重なって脳の神経回路の中で固定された部分ばかりが使われてしまい(場合によってこだわりなどが強くなり)、軌道修正が難しくなるという部分はあります。ですが、サポートしてガイド役となるご両親のやり方次第です。

 

 私の経験では20歳を過ぎた方でも対人関係発達支援法の取り組みでコミュニケーションが改善し社会に出ていけた例もあります。最新の脳科学研究からも脳は60歳を過ぎても、死ぬその瞬間まで変化し続けることがわかっています。その意味でも「臨界期」は存在しないと考えています。

 

(b)保険適用?:各種健康保険が適用できますか?

 

…医師の診察を受け、投薬などを受ける部分については適用できます。サウンドセラピー・対人関係発達支援プログラムについては医師の判断を受けて進めるものではないため、自費負担となります。

 

(c)横浜へ通えないとだめ?

コロナへの対応前からオンラインで全ての取り組みを進めているケースもあります。

 

 

(d)発達診断でグレーゾーンと言われた

1才半検診や3歳検診で診断はつかないがグレーゾーンとか、ただ様子を見ましょう、と言われることがあります。大切なのは診断がつくかつかないか、ではなく、どんな心配な特徴があるか、心配な遅れ気味のところをどう伸ばすような関わりをするか、です。また診断がつくとしても、もう定型発達が起こらないと決めてかかる必要はないと思います。

 

というのは、どこか「障害」というレッテルがずっと変わらない一生背負うものといったイメージが世の中にはあるようだからです。一方私が対人関係発達支援法コンサルテーションで関わったことのあるお子さんの多くは1〜2年の間に診断名がなくなりました(そういった研究データはもちろん北アメリカでもあり、このHPの他のページにも記載しています)。それは大きなニュースなはずなのに親御さんからすると知らないうちに当然のこととなるようでお知らせいただけなかったりすることもあります(笑)。

 

まずは変えよう、変えられるもの、と親が思えるかどうか(その前に現状を受け入れる、というハードルを越える必要はありますが)が分かれ目のように感じます。

 

具体的にはことばの遅れ、変化に弱い、社会性の問題(同年齢の友達に関心がない、遊ぼうとしないetc)、衝動性の問題(集中が持続できない、すぐ気が逸れる、親の知らぬ間に何かに気を取られてどこかへ行ってしまう、自分の思いを表現できないで友達を押したり叩いたりしてしまうetc.)、感情のコントロールの問題(かんしゃくがひどい)などの指摘例があります。これらは定型発達でたどるべき途中の過程のどこかがうまく行っていない結果として目立っているのであって、どこまで戻ってサポートすればよいか点検し、親の接し方を工夫して本人のペースで定型発達をたどるようガイドが可能です。

 

様子をみる、つまり就学前検査まで何も特別なことはしない、というのはもったいないことです。また、診断がつくかどうか、といった白か黒かにこだわるのも疑問に思います。というのは、診断基準にはまらないとしても依然として本人が周囲とうまくやっていけないとしたら心配なことに変わりはないのでは、と思うからです。

 

療育の専門家におまかせするというのも、もったいないことです。工夫次第で毎日の生活の中で親ができることがほとんどだからです。うまく時間を使えば、週一度どこかに連れていって何かしてもらうよりも、はるかに効果的なことが家庭では可能です。感覚統合のような作業療法領域の療育についても家庭で取り入れてできることは多くあります。

 

例えば生後12ヶ月、生後24ヶ月頃に本来たどるマイルストーン、発達課題、発達の節目となるものが、今目の前のお子さんにはクリアできているか、親が見通し、援助できるようコンサルタントはサポートしていきます。親のガイドを受け入れてこどもが親を見て考えたり試したりできるような関係作りの部分だけでなく、定型発達のたどる小さなステップが重なり、絡まり合って伸びていく詳細な過程をこどもがひとつずつクリアするようプログラムや宿題が働くシステムが対人関係発達支援法では働きます。

 

少なくとも言葉が遅れている、だから言葉を沢山かければよい、言葉が出るよう教えればよい、というのは短絡的な考え方かなと思います。その子が周囲をどんな世界として知覚し理解しどう受け取って自分の知識となるべく情報処理しているか、きちんと分析して親が引き受けて援助することは可能だと考えているからです。

 

また、診断がはっきりしない、けれど少しずつうまくいっていないことがあるからグレーゾーンと言われることが多いと思います。微妙なところだからこそ、お子さんの今の発達にぴったり合わせて「ここがうまくいっていないから今はこんな関わり方」と勧めると驚くほどお子さんが変化する例をたくさん経験しています。2014年から関わっている、東京都大田区わかばの家の外来訓練でもそうです。

 

 

(e)対人関係発達支援法の日本語の本は

 

自閉症/アスペルガー症候群 RDI「対人関係発達指導法」―対人関係のパズルを解く発達支援プログラム

自閉症・アスペルガー症候群のRDIアクティビティ【子ども編】

 

の2冊が日本語訳として出版されています。日本の自閉症治療をリードする専門家の先生方が訳してくださったのですが、訳語が難しかったり、アクティビティ中心だったりです。私がコンサルタントのトレーニングを開始した2006年には対人関係発達支援法はアクティビティ中心ではなく日常の生活の中でどんなことをどんな視点で一緒にやるか、という方向へシフトしていました。プログラムの内容や焦点もずいぶん変わっているので日本語訳を参考にすることはおすすめできません。対人関係発達支援法プログラム創始者のガットステイン博士がこれらはもう使わないでくれと明言しています。

 

My Baby Can Dance: Stories of Autism, Asperger's, and Success Through the Relationship Development Intervention Program

 

The RDI Book: Forging New Pathways for Autism, Asperger's and PDD with the Relationship Development Intervention Program

 

が、新しいプログラムの焦点やプログラムの適用例を紹介しています。英語やスペイン語他の言語で出版されていますが、日本語訳をご覧になりたいときはお知らせください。部分的にお送りします。